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・おしゃべりな本棚


著:中村 卓
出版社:文芸社
タイトル:

読書脳 ぼくの深読み300冊の記録

著者:

立花隆

出版社:
文藝春秋
書評:

 
 

 ポエジーは偶然を排除する、とマラルメは言わなかっただろうか? 「裸形の花々の苑園」という美しいメタファーで。実際の話、読み人知らずの万葉の世界の逞しさたるやまさしく僥倖である。輪郭によって物自体が連れ出されはすれ、呼び起こすのは気配ではなく、言葉であり線や色であることを、不慣れな詩作に戸惑うドガにマラルメは説き聞かせている。ペンよりは若干筆運びのもたつく絵の世界では、少し遅れて登場したセザンヌがこのことを理解した。ちなみに普遍性が損なわれることなくA 或はBの、変換自在な代入が許されるなら、公式上も偶然は介在しなかったことになる。A=Bで尚且つA≠Bとなり、必然性の欠如が明白であるばかりか偶然は無効となるだろう。

 マスコミは今、ゴーストライター騒ぎで湧き返っている。元々、この類の事件はヒューマンリレーションズが下敷きの悲しいペテンに過ぎないのだから、「さわらぬ神」に越したことはない。甘やかされた子羊のようにお互いの傷を舐め合うのも、もうそのへんまでと誰か言ってくれてもよさそうなものだが。偶々、スポットを浴びることとなった<ソナチネ>がオリンピックの氷上の花を萎えさせるとしたら、演技の巧拙か舞台効果のほかに原因があるとは思われない。ラスコーの壁画以来、芸術が出自とはおよそ無縁の存在であることは万古普遍の真理であった。

 前置きが長すぎたようなので、そろそろ本題に入ろう。相変わらずドラスティックなタイトルの立花本だが、もう慣れっこの読者も多いことだろう。この書物共和国宣言の亜空間には若手のスタッフが目白押しなのは想定内だが、それ以上に不気味なのはあのネコビルに処せましと積み重なる飼い殺しの本の山である。池田大作の著書の大半が代作であったのとはまた別の意味で、毒気にあてられた出版会はもう間違いなく煮沸作業に大童というものであろう。お手軽さ加減がエスカレートすれば何でもありの露天商の捨て台詞は「持ってけ泥棒!」だが、厭な奴ほどよく稼ぐ。春夏秋冬おしなべて庭の造作を楽しむだけなのに、出窓の賑わいは本来の風情とは似ても似つかない。「蒼ざめた棒飴のような時間」とは晩年の小林秀雄の傍白、朝となく夜となく、この文学の神様の枕もとにはパキパキと焚火のような音立てて砕け散る思考のロマンがあった。







 

 


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